六価クロムのめっきについて
六価クロムは、人体や環境への影響が懸念されており、RoHS指令やREACH規制などで厳しく制限されています。そのため、クロムめっきをご検討されているお客様の中には安全性や規制の対象であるかどうかといった疑問を持たれる方も少なくありません。
めっきにおいて、六価クロムはクロムめっき、またプラスチックめっきのエッチングで使用する場合があります。
結論から述べると、めっきにおける六価クロムは、あくまで工程で使用するものであるため、製品の安全性に問題はありません。
クロムめっきでは、処理後に六価クロムが還元されて「ゼロ価クロム」になります。そのため、RoHS指令に対応した、安全性の高い金属皮膜が得られます。またエッチングの場合も洗浄を行うため、製品の表面に六価クロムは残留しません。
しかし、世界的に環境保全の意識が高まっていることもあり、各規制の対象外であっても、六価クロムを使用しないめっきプロセスが求められる場合もあります。また、将来的に六価クロムの使用そのものが規制される可能性もあるため、環境に対応した工法の開発が求められています。
今回は、六価クロムに関する基本的な情報、まためっきの安全性や規制について、そして塚田理研の環境対応型めっきプロセスについてご紹介します。
六価クロムとは
六価クロムとは、元素のひとつであるクロム(Cr)が変化した物質です。クロムは、銀白色で硬く、耐食性や耐熱性に優れた特性を持っており、様々な産業で使われています。
クロムにはいくつかの種類があり、代表的なのが「六価クロム」と「三価クロム」です。
六価クロムはクロムの状態から6つ電子が少ない状態のものであり、人工的に作り出されたものです。優れた耐食性を持つ一方で毒性があるため、六価クロムを使用する事業者は法規制を守り、適切な取り扱いや管理が義務付けられています。
六価クロムは顔料の材料などに使われている他、金属加工の分野ではめっき加工の他、ステンレス鋼の素材として利用されています。
一方、三価クロムは電子が3つ少ないクロムで、鉱石(エメラルドやルビー等)など自然界に多く存在し、人間の体内にも微量ながら必要なミネラルとして含まれています。毒性が低いため、六価クロムの代替として注目を集めています。
クロムめっき(6価クロム)の安全性や特徴について
クロムめっきは六価クロムを使用する場合があります。
めっき後に析出される皮膜はゼロ価クロムであり、六価クロムは含まれていません。このため、加工後の製品はRoSH指令に対応できる安全性の高い状態といえます。
クロムめっきは、青みがかった美しいシルバー色が特徴で、金属ならではの高級感の表現に適しています。また、耐食性、耐摩耗性に優れ、めっきの中では最高レベルの硬度を誇ります。
クロムめっきは膜厚によって2つの種類があり、目的に応じて選ばれています。
●ニッケルクロムめっき(装飾クロムめっき)
膜厚2μ以下の薄いクロムめっきです。水栓金具や自動車の外装部品など、装飾性が求められる製品で使われている他、ニッケルめっきの保護膜として使われています。
●硬質クロムめっき
膜厚2μ以上のクロムめっきです。シャフト、治具など耐食性や耐摩耗性が要求される製品で使われています。
クロメート処理とクロムめっきの違い
クロムめっきと混同されやすいものとして、クロメート処理があります。どちらも「クロム」が含まれていますが、目的も処理方法も大きく異なります。
クロムめっき:金属クロムを表面にコーティングする処理
クロメート処理:防錆を目的とした化成処理皮膜
この二つの処理は似て非なるものです。以下にて簡単にご紹介しましょう。
●クロムめっき(RoSH指令対応)
製品表面にゼロ価クロムを析出させるめっき処理です。美しい外観、硬度や耐食性など機能性に優れた皮膜が特徴で、自動車部品や金型、装飾品などに幅広く使用されています。
めっき品は安全性の高い0価クロムで覆われているため、RoHS指令などの規制の対象外であり、安全に使用することができます。
●クロメート処理(RoSH指令非対応)
主に亜鉛めっきやアルミ素材の耐食性を高めるために行う化成処理の一種です。処理後の皮膜には六価クロムが含まれているため、RoHS指令などの環境規制の対象となります。(尚、プラスチックめっきではクロメート処理は使用しません。)
※最近では代替技術として、三価クロムを用いたクロメート処理も普及しています。三価クロムを使うことで六価クロムを含まない皮膜が形成されるため、RoHS指令にも対応しています。
塚田理研のクロムめっきの「6価クロム以外の選択肢」について
これまで六価クロム、そしてめっきの安全性について解説してまいりました。
これまでご紹介してきた通り、六価クロムは人体や環境に有害である一方、めっき品においてはゼロ価クロムに還元されるため、安全であり、RoHS指令の規制対象外です。
しかし近年は、環境保全の意識の高まりとともに、より安全で持続可能な素材や工法が求められる傾向にあります。
また、ヨーロッパでは自動車の製造において六価クロムの使用が完全に禁止される予定であり、その他の分野の製品においても、将来的に六価クロムの使用が更に制限されることが予測されます。
塚田理研はめっきメーカーとして、人と環境に配慮したモノづくりを目指し、環境にやさしい工法の開発に長年取り組んでまいりました。
六価クロムを使用する場合には、排水・廃液処理など徹底した管理体制を構築しているほか、六価クロム以外の選択肢として「六価クロムフリーめっき工法」を開発し、提供しております。
【六価クロムフリー工法】
- 三価クロムめっき
- クロムフリーエッチング工法
以下にて詳しくご紹介します。
三価クロムめっき
三価クロムは自然界の中でも多く存在する、毒性が低く、人体にとって必要なミネラルでもあります。
この三価クロムを六価クロムの代替として利用することで、環境負荷の低いクロムめっきが可能となります。三価クロムを用いためっきは、三価クロムをゼロ価に還元しためっきであり、六価クロムと同様に皮膜に三価クロムは含まれません。
従来の三価クロムめっきは、耐食性と色合いで課題がありましたが、当社の「装飾三価クロムめっき」は、六価クロムめっきと同等の耐食性が得られ、色合いも六価クロムとほぼ変わらない美しい白色系、また黒色のめっきが可能です。
業界に先駆け、三価クロムめっきの全自動ラインも完備しており、安定した品質で量産も可能です。
クロムフリーエッチング工法
プラスチックめっきでは高密着なめっき皮膜を析出するために、素材の表面を荒らすエッチングが行われます。このエッチング処理において六価クロムが使われてきましたが、当社では六価クロムを使用しない工法を開発し、提供が可能です。
【六価クロムフリーエッチング工法】
●過マンガン酸エッチング工法
六価クロムの代替として過マンガン酸を用いたエッチング工法です。六価クロムと同等のエッチングパターンを実現しており、高密着なめっきが可能です。
●オゾン(化学薬品不使用の改質水)
高い酸化力を持つオゾンを利用したエッチング工法です。六価クロムと同程度の密着強度が得られます。
●UV
紫外線を直接照射し、プラスチック表面を粗化させるエッチング工法です。排水処理が不要であり、環境にやさしい工法です。
当社では上記のように様々な種類の表面改質技術を開発しており、汎用樹脂はもちろん、エンプラやスーパーエンプラにも適用可能です。(量産にも対応)
三価クロムめっきと組み合わせることで、より環境負荷の少ない表面処理が可能となります。お客様の製品に最適なプロセスのご提案も可能ですので、お気軽にご相談ください。
塚田理研のめっき(六価クロム)に関する取り組み
当社は自然豊かな長野県駒ケ根市に本社を構えています。美しい環境を守り、従業員の安全も確保するため、様々な取り組みを行っています。
1.大気洗浄装置で綺麗な空気だけを排出
全てのめっき槽の上部に、めっき槽から発生したミストやガスをその場で吸い込む排気口を設置。排気ファンを経由し、大気洗浄装置スクラバーによって浄化された綺麗な空気だけを排出しています。
また、六価クロムを使用する現場では、工場内の空気の検査(六価クロム濃度測定)を定期的に第三者機関に依頼し、実施しています。
2.廃液による危機管理も徹底
当社では排水リサイクル設備を完備しており、排水の50%はリサイクル水として再利用し、排出する場合には国の基準よりも更にシビアな業界基準を遵守し、排水をしております。
六価クロムも廃水から徹底的に除去し、更に地下浸水による事故を防止するため、めっきタンクの下には耐薬品性塗料を塗布し、その上に塩ビシートを敷いて、地下浸水のリスクを抑えています。
また、床に漏れた水は河川ではなく、リサイクル施設の地下ピットへ落ちる仕組みとなっております。
このように二重、三重の対策により、六価クロムの流出を防いでいます。
このように、塚田理研では環境保全と安全性の両立に取り組んでいます。更に詳しい取り組みについては、以下のページをご覧ください。
めっき(6価クロム)や環境対応型のめっきのご相談は塚田理研まで
六価クロムについて、まためっきで用いた場合の安全性についてご紹介しました。めっき品は六価クロム、または三価クロムを用いた場合、めっき皮膜はゼロ価クロムとなるため、問題ありません。
現在は六価クロムの使用そのものは制限がありませんが、世界は六価クロムの使用を極力少なくしていく動向であり、めっき業界でも六価クロム以外の工法が求められています。
モノづくりは利便性を追求する時代から、環境保全との両立を目指す時代へと変化しています。当社、塚田理研は長年にわたり六価クロム不使用の工法を研究開発しており、お客様のご要望に応じた様々な選択肢をご用意しております。
六価クロムを用いためっき加工、また三価クロムをはじめとした六価クロムの代替技術についてお求めでしたら、お気軽に以下の窓口までお問い合わせください。
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本社:0265-82-3256
東京営業所:042-444-1287
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