無電解ニッケルめっきの磁性について解説します
無電解ニッケルめっきの磁性について解説します。
無電解ニッケルめっきは無電解めっきの中でもスタンダードなめっきで、プラスチックめっきでも、下地としてよく使用されています。(導電性の付与)
一般的によく使用されているめっきですが、無電解ニッケルめっきにはタイプがあり、それによって磁性が異なる事はご存知でしょうか。
今回のコラムでは、無電解ニッケルめっきの磁性やその他の特徴について詳しく解説していきます。
特徴を理解することで、磁気特性が求められる製品への表面処理の選択肢が広がります。
めっきの利用を検討されているメーカー担当者の方は、ぜひ参考にしてみてください。
無電解ニッケルめっきの磁性はリンの含有量によって異なります
無電解ニッケルめっきの磁性は、リンの含有量、つまり「無電解ニッケルめっきのタイプ」によって異なります。
ハードディスクドライブのような磁気記録媒体では、構成部品の磁性制御が必要です。
例えば、ハードディスクドライブの下地は、ノイズの発生抑制の観点から非磁性であることが求められます。
無電解ニッケルめっきの種類によっては磁性を持つことがあるので、リンの含有量の違いによる特徴を理解することは非常に重要です。
以下では、無電解ニッケルめっきの種類や不具合の事例について、解説します。
リンの含有量に応じた分類
無電解ニッケルめっきは、リンの含有量に応じて以下の種類に分類されます。
リンの含有量 | 磁性 | |
低リンタイプ | 1-4% | 磁性 |
中リンタイプ | 4-10% | 非磁性 |
高リンタイプ | 10-15% | 非磁性 |
低リンタイプは磁性を持っていますが、中リンタイプと高リンタイプは磁性を持っていません。
これは、リンの含有量に応じてめっきの結晶構造が変化することが理由です。
リンの含有量が多くなると、めっき皮膜の結晶構造が結晶質から非晶質に変化し、非磁性化します。
ただし、中リンタイプや高リンタイプであっても、熱処理(ベーキング処理)を施すと磁性を持つ点は留意しておいてください。
以下のコラムでも熱処理によって起こる変化について触れています。是非ご覧ください。
無電解ニッケルめっきの硬度はどの位?特徴や性質を塚田理研が解説
めっき後の不具合の原因と対策
金属に処理する場合、無電解ニッケルめっきを施しても、磁性を持つ場合があります。
例えばめっきの膜厚が薄いと、素材の影響を受けやすいため、磁性を持ってしまうケースがあります。
このように、無電解ニッケルめっき自体が非磁性であっても、素材の磁性が消失するわけではありません。
磁性を気にしたい製品の場合は、素材に注意が必要です。
プラスチックは磁性がないため、めっきが薄くても非磁性化できます。
めっきを厚くできない場合には、素材の材質変更も検討されることをお勧めします。
無電解ニッケルめっきとは
無電解ニッケルめっきとは、そもそもどのようなめっきなのか、また磁性の他にどのような特徴があるのか、ということについてもご紹介しましょう。
無電解ニッケルめっきは、化学反応を利用してめっきをする無電解めっきのひとつで、製品の表面にニッケル皮膜を形成する表面処理技術です。
無電解めっきにて加工されるため、めっきの厚みが均一で、金属だけでなく絶縁体にも加工ができる特徴があります。
また、無電解ニッケルめっきは様々な特徴を持っており、幅広い用途に応用されているメジャーなめっきのひとつと言えるでしょう。
前述しましたが、プラスチックにもめっきができるため、電気めっきの下地、つまり導電目的として利用されています。
同じニッケルめっきである電気ニッケルめっきとは異なる性質があり、特性に応じて使い分けられます。
無電解ニッケルめっきの特徴や用途、電気ニッケルめっきとの違いについて、具体的に解説します。
特性や主な用途について
無電解ニッケルめっきの主な特性は、以下のとおりです。
- 耐食性や耐薬品性に優れている
- 耐摩耗性に優れており、熱処理によって硬度の向上も可能
- 磁性を変化させることができる
上記の特徴に加えて、無電解ニッケルめっきは金属だけでなく絶縁体にもめっきできることから、様々な用途に使われています。
例えば、耐食性が求められる自動車の油圧ブレーキやシリンダー、耐薬品性が必要な化学反応槽、耐摩耗性が求められる自動車用のディスクブレーキやベアリングなどに応用されています。
プラスチックは金属に比べて軽くて安価なため、製品の軽量化が進む自動車産業や精密機械の部品などで、金属の代替品として切り替えられています。
電気ニッケルめっきとの違い
無電解ニッケルめっきと電気ニッケルめっきの違いは、めっきの成膜に電気を利用しているか否かという点です。
無電解ニッケルめっきの成膜には電気を利用しないため、電気を通さない樹脂などの材料にも処理できます。
電気ニッケルめっきは、電流の流れやすさで皮膜にムラが生じるため、複雑形状には均一にめっきすることが困難です。
一方、無電解ニッケルめっきは薬品の化学反応を利用するため、複雑形状でも均一に成膜することができます。
また、同じニッケルめっきですが、析出される金属が異なります。
電気ニッケルめっきは純度の高いニッケルですが、無電解ニッケルめっきはニッケル合金が析出されます。
塚田理研はお客様の用途に最適な機能めっきを提供いたします
塚田理研はプラスチックめっきのトップメーカーとして、これまで多くのお客様にご満足いただけるめっき技術を提供してまいりました。
また、環境負荷の軽減を目指した工法や、プラスチックの可能性が広がる技術の開発にも取り組んでおり、人と自然の共存、そしてめっきを通して豊かな暮らしの提供を目指しております。
今回のコラムではプラスチックめっきでは一般的な、無電解ニッケルめっきの磁性についてご紹介いたしました。
無電解ニッケルめっきはプラスチックめっきの下地としてよく使われている技術です。
ですが、リンの含有量によって磁性が異なりますので、用途に応じて適切な後処理が必要となります。
磁性の有無は製品の性能に影響を及ぼす重要なポイントとなりますので、注意が必要です。
当社ではお客様のご要望や製品の用途をお伺いし、適切な方法にて高品質なめっき加工をいたします。
用途と図面の指示が合わない場合は、営業スタッフより確認をさせていただき、適切な処理方法を積極的にご提案いたします。
今回の磁性に関する課題はもちろん、プラスチックめっきのことでお困りでしたら、お気軽にご相談ください。
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