無電解ニッケルめっきの熱処理を素材別(金属・プラスチック)に解説します

無電解ニッケルめっきの熱処理について解説します

無電解ニッケルめっきの熱処理について解説いたします。

無電解ニッケルめっきは無電解めっきの中で最も使われている技術で、金属はもちろんプラスチックにも適用できることから、様々な分野、用途で使われているポピュラーなめっきです。

無電解ニッケルめっきはメリットの多い優れためっき方法ですが、用途によって熱処理を施すことがあります。

また、無電解ニッケルめっきをする素材が金属なのかプラスチックなのかによって、実施する熱処理も異なります。

今回はプラスチックめっきの塚田理研が、無電解ニッケルめっきの基本的な情報、そして熱処理について素材別(金属・プラスチック)にご紹介します。

無電解ニッケルめっきとは【基礎知識】

無電解ニッケルめっきはどのようなめっきなのか、基礎知識を最初にご紹介しましょう。

無電解ニッケルめっきは、一言でまとめると「無電解めっきにて製品にニッケル皮膜を析出させる技術」です。

無電解ニッケルめっき 熱処理

無電解めっきとは、めっき液の中で発生する還元反応を利用し、製品の表面を金属の膜で覆う技術です。

電気を使わないため、電流分布の影響によるムラがなく、均一な厚みでめっき皮膜を形成できます。

(電気めっきの場合は、電流分布の影響を受けるため、めっきの厚みが不揃いなだけではなく、パイプなどの場合は部分的に無めっきになってしまう場合があります)

また、無電解ニッケルめっきは金属素材の製品だけでなく、絶縁体(プラスチックなど)にも加工する事ができます。

プラスチックに無電解ニッケルめっきを施すことで導電性を与えることができるため、電気めっきも可能となり、金属と同等の機能性を付与する事ができます。

プラスチックは軽い素材なので、自動車部品など軽量化が求められる分野において、金属の代替品として注目を集めています。

無電解ニッケルめっき 熱処理

めっき加工の詳しいプロセスや用途についてはこちらのコラムで詳しくご紹介しています。是非ご覧ください。

樹脂めっき加工とは?製品に美観・機能を与え、ニーズに応える当社の技術を紹介

当社、塚田理研はプラスチックを専門としためっきメーカーで、プラスチックへの加飾めっき、機能めっきを承っております。

プラスチックめっきの詳細につきましては、お気軽にお問い合わせください。

また無電解ニッケルめっきの特徴については次のコラムでも詳しくご紹介しております。

無電解ニッケルめっきの特徴や電気めっきとの違いについてはこちら

無電解ニッケルめっきの熱処理とは?

無電解ニッケルめっきへの熱処理は、素材が金属かプラスチックなのかによって実施する熱処理の種類や目的が異なります。

普段金属を取り扱われている場合「無電解めっき後の熱処理は硬度をあげるためなのでは?」と思われがちですが、プラスチックめっきの場合は熱処理の種類や目的が異なりますので、分けてご理解いただければと思います。

ここでは「素地が金属の場合の熱処理」、そして「素地がプラスチックの場合の熱処理」について解説いたします。

無電解ニッケルめっき 熱処理

【金属の場合】熱処理(ベーキング処理)の目的

金属への無電解ニッケルめっきの場合、後処理として熱処理(ベーキング処理)を実施する事があります。

■熱処理の目的
●硬度、耐摩耗性の向上
●水素脆性の防止(遅れ破壊の防止)
●密着性の向上

無電解ニッケルめっきは非常に硬い金属皮膜ですが、熱処理によって更なる硬度の向上が可能です。

熱処理後の無電解ニッケルめっきの硬度は、無電解ニッケルめっき(中リンタイプ・550Hv)の場合、950Hvまで向上させることができます。

硬いめっきの代表としてクロムめっき(700-1000Hv)がありますが、熱処理をすることによって同程度の硬度にまで向上することが可能です。

製品に高い硬度を求める場合に熱処理をするケースが多く、また、熱処理によって水素脆性による遅れ破壊も防ぎ、めっきの密着性を向上させることができます。

【プラスチックの場合】熱処理の目的

素地がプラスチックの場合、金属のように熱処理(ベーキング処理)をしてしまうと、成形品の変形が発生してしまう為、基本的には実施しません。

硬度を要求する場合は、ベーキング処理ではなく合金系など他のめっきをご提案いたします。

(※プリント基板のレジスト処理後に、硬化目的でベーキング処理を実施するケースはあります。)

プラスチックめっきで、一般的に行われている熱処理は「アニール処理」です。

プラスチックは水分を吸水する性質があり、大気中の水分も取り込んでしまいます。

水分を含んだ状態だと前処理の熱で表層が膨れ、めっき密着不良の原因となってしまうため、めっきの前にプラスチック内の水分を取り除く必要があります。

このように、プラスチックが含んでいる水分を飛ばし、乾燥させることを目的とした熱処理が「アニール処理」なのです。

アニール処理は、成形前のペレットの状態、また吸水性のある素材の場合は成形後に実施され、乾燥炉にて適切な温度と時間で処理されます。

アニール処理後はしっかりと水分が飛ばされており、めっき不良のリスクを低減し、寸法精度も保ちます。

このように、素材がプラスチックの場合、金属とは違う目的・方法で熱処理を実施します。

無電解ニッケルめっき 熱処理

※アニール処理で使用する乾燥炉

熱処理を行う場合の注意点

素地が金属の場合、一般的に行われる熱処理はベーキング処理となり、一般的に硬度の向上を目的に実施されています。

注意点としては、熱を加えることで表面が酸化してしまうため、美観重視の製品の場合には適さない点が挙げられます。

また、硬度が向上するとクラックが起こる可能性もありますので注意が必要です。

プラスチックめっきの場合の熱処理における注意点は、成形品の取り扱いです。

前述した通り、プラスチックは大気中の水分を吸水する性質があり、その水分によってめっきの密着不良が起こるため、成形後は長期間放置しないようにします。

今回ご紹介したアニール処理にて乾燥させることもできますが、その分コストがかかってしまいますので、適切に取り扱う事をおすすめします。

※成形後のアニール処理が推奨される素材もありますので、その場合にはご案内いたします。

また、熱処理とは少し異なりますが、素材に汚れが付着している場合もめっき不良の原因となりますので、ご注意ください。

無電解ニッケルめっき 熱処理

こちらのコラムで膨れなどの密着不良の原因について解説しております。こちらもぜひご覧ください。

めっきの膨れの対策とは?密着不良を防ぐ方法を塚田理研が徹底解説

当社、塚田理研はプラスチック製品の金型から成形、めっき、塗装、組立までワンストップで承れる一貫生産体制を整えております。

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確かなめっき技術、工程・品質管理はもちろん、品質低下にならないよう、素材を適切に取り扱いますので、高品質な製品を製造いたします。

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当社は創業1963年、プラスチックめっきのトップメーカーとして、これまで高品質なめっき技術を提供してまいりました。

時代のニーズに応じためっき技術の提供、そして新技術の研究開発に取り組み、現在では加飾めっき・機能めっきはもちろん、難めっき材へのめっきや基板へのめっきなど、幅広く対応しております。

無電解ニッケルめっき 熱処理

今回は、無電解ニッケルめっきの熱処理についてご紹介しました。

無電解ニッケルめっきを施す素材が金属なのか、プラスチックなのかによって熱処理の種類が異なります。

プラスチックめっきの場合、金属のようにベーキング処理をしてしまうと変形してしまいますので、無電解ニッケルめっきの皮膜以上の硬度が求められる場合には他の種類を検討されることをおすすめいたします。

その他、プラスチックめっきでお困りの事、ご不明な点がありましたら、お気軽に当社までご相談ください。

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