電磁波シールドの樹脂めっき技術について塚田理研が解説します

電磁波シールド×樹脂めっきは電磁波ノイズから電子機器を守る技術です

電磁波シールドされた樹脂は、電磁波ノイズの影響から電子機器を守る効果があり、現在はめっきをはじめ、様々な選択肢があります。

電子機器などは電流を利用し、情報を電子回路で伝える仕組みですが、この電流の働きによって電磁界を作り出し、不要な信号「電磁波ノイズ」を生み出します。

現代の電子機器は、日々の生活やビジネス活動において欠かせない存在となっています。

しかし、これらの機器は電磁波ノイズによる干渉に弱く、その影響は時に重大な問題を引き起こすことがあるため、抑制し、コントロールする必要があります。

電磁波シールド 樹脂

近年、自動車業界の電気自動車(EV)への移行や、5G通信技術の急速な発展に伴い、電磁波ノイズの対策は、機器の動作を保証する上で重要な課題となっています。

電子機器の誕生してから現在に至るまで、電磁波ノイズの抑制に関する研究が進められ、現在では電磁波シールドの方法には多様な選択肢があります。

この選択肢の中で、無電解めっきによる「電磁波シールドめっき」は、その特性により、電磁波ノイズの抑制、製品の多機能化、そして小型化への対応において、完成度の高い技術として評価されています。

今回のコラムでは電磁波シールドめっきについて、詳しくご紹介します。

樹脂への電磁波シールドめっきをご検討でしたら、是非ご参考ください。

電磁波シールドの選択肢について

前述したように、電磁波シールドには複数の選択肢があります。

  • めっき
  • 電磁波シールド樹脂
  • 塗装
  • 金属蒸着
  • 金属めっき繊維

上記のように樹脂を基材とした様々な新材料が開発されてきました。

特に大きな進歩を遂げている自動車産業では、軽量化による燃費、電費性能の向上の為、樹脂化と同時に電磁波ノイズ抑制の技術も重要視されています。

また、国際無線障害特別委移管会(CISPR)による国際規格をはじめ、国や地域によって法制化されており、安全性の向上等のためノイズ対策は非常に重要な課題とされています。

電磁波シールド材や方法には様々な選択肢がありますが、規制をクリアし製品が正しく動作できる、適切な手段を選択することが重要です。

電磁波を遮断する樹脂めっき!電磁波シールドめっきの特徴

電磁波を遮断する樹脂めっき技術「電磁波シールドめっき」は、パソコンの筐体の軽量化を目的に、金属から樹脂に置き換わったことがきっかけとして1997年頃から使われ始めた技術です。

最近も多くの機械内部では軽くて低コストな樹脂が多く使われています。

樹脂は電磁波を透過する性質がありますが、無電解めっきで金属皮膜を形成する事で導電性を付与し、電磁波シールドの効果が得られます。

無電解めっきは絶縁体にも適用できる技術であり、樹脂にも加工ができるほか、複雑な形状であってもムラなく均一な膜厚でめっきがつけられる点が特徴です。

電磁波シールド 樹脂

無電解めっきの詳細はこちらをご覧ください

電磁波シールドを目的としためっきでは、析出する金属に銅とニッケルを使用します。

銀や銅は電気伝導性が高い金属として知られており、銅は銀に比べてコストが低く、加工性に優れているため、電磁波シールドに使用されています。

銅は熱伝導性にも優れているため、電気銅めっきをつけることで放熱効果も得られる点もメリットもあります。

しかし銅だけだと腐食により電磁波シールドの効果が低下してしまうため、銅めっきの上に耐食性や耐摩耗性に優れたニッケルめっきをつけます。

近年はめっき技術の進化により、従来加工が困難とされていたエンプラやスーパーエンプラへのめっきが可能になり、適用範囲が広がっています。

なおABS樹脂へのめっきにつきましては下記記事でも解説しておりますので、あわせてご覧ください。
ABS樹脂へのめっきと素材の特長についてはこちら

電磁波シールドめっきの特徴について、詳しくご紹介します。

電磁波遮蔽性を樹脂に付与することにより広範囲のシールドが可能

電磁波シールドめっきはその名の通り、電磁波を防ぐことができない素材に対し、電磁波遮蔽性(導電化)を与える技術です。

電磁波シールドめっきは、広範囲の電磁波シールドが可能で、100KHzから10GHzの低周波もカバーします。

例として、ポリカーボネートに無電解銅めっき1㎛、その上に無電解ニッケルめっきを0.25㎛をつけると30MHz~1GHzの周波帯では、厚さ3mmのアルミと同程度のシールド効果が得られます。

※両面にめっきをつけるか、片面だけにめっきをつけるかによってコストやシールド効果が異なります。(片面のみの場合、反射や減衰が少なくなるため)

シールドめっきに関しては、ASTMの基準に基づいて定義されており、この基準は数多くのメーカーが採用するシールドめっきの標準とされています。

以下がASTMの規格の一覧となります。

最小厚さ(㎛) シールド効果 適用例
無電解銅 無電解ニッケル
1.0 0.25 80~100dB FCC/VDE規制
(ClassB)
1.0 1.5 80~100dB 過酷な環境
2.5 0.25 90~110dB MIL-STD-461B
任意 1.0 50~70dB FCC/VDE規制
(ClassA)

めっきをつける樹脂(母材)について

電磁波シールド目的で採用されている樹脂には、難燃性や耐熱性が求められるケースが多く、用途にもよりますが汎用樹脂(ABS樹脂)のほか、エンプラやスーパーエンプラなど特殊な樹脂が使われています。

電磁波シールド 樹脂

しかし、エンプラやスーパーエンプラは通常のめっきプロセスが適用できないため、対応可能なめっきメーカーは限定されます。

塚田理研はこのような難めっき材と呼ばれる素材に対しても、密着性の高いめっきが可能となる前処理の工法を開発しておりますので、対応が可能です。

また、めっきが難しいとされてきたPPSや芳香族ナイロンなどの樹脂に対しても、樹脂メーカー様とのご協力によってシールドめっきが可能なグレードやめっき工法を開発するケースもございます。

軽量化やコスト低下が実現

電磁波シールドとしての樹脂めっきは、数多くのメリットがあります。

以下にて、電磁波シールドに樹脂めっきが選ばれる理由(メリット)についてご紹介します。

  • 軽くて低コスト
  • 複雑な形状にも均一にめっきができる
  • 薄くつけられるため、製品の小型化に対応できる
  • 樹脂の物性を活かしながら金属同等のシールド効果が得られる

高い電磁波シールド効果をはじめ、製品の小型化や、機能性の向上という点においても、樹脂めっきは必要不可欠な技術といえます。

樹脂電磁波シールド技術の詳細は当社までお問い合わせください

樹脂電磁波シールド、特にめっき技術を利用したシールド方法についてご紹介しました。

電磁波ノイズの影響を受けると、電子機器の誤動作の原因となります。

命に関わることもあるため、電磁波ノイズの抑制は喫緊の課題のひとつといえます。

電磁波シールドにはいくつかの種類、方法がありますが、樹脂めっき技術を利用した電磁波シールドめっきは高いシールド効果があり、汎用性にも優れているため、多くの産業で採用されています

当社、塚田理研は樹脂への加飾・機能めっきを提供しているめっきメーカーです。

樹脂に対する電磁波シールドめっき技術にも対応しており、これまで自動車業界を含む多岐にわたる分野で、実績を積み重ねてきました。

塚田理研は、長年にわたる実績と知識を活かし、お客様の課題に対して最適な解決策をご提案します。

樹脂への電磁波シールドで課題がありましたら、以下の窓口までお気軽にご相談ください。

【お問い合わせ先】
本社:0265-82-3256
東京営業所:042-444-1287
刈谷オフィス:050-6868-2912
お問い合わせフォームはこちら