電磁波シールドに樹脂を活用!自動車産業における重要性や動向とは
電磁波シールドに樹脂は自動車をはじめ、様々な電子機器に活用されています。樹脂は軽く、加工と量産がしやすい上にコストも金属と比較すると安価であるため、製品の軽量化と製造コストの低減が実現できる素材として、多くのメーカーで採用されている素材です。
しかし、樹脂そのものは導電性がないため、電磁波を遮断することはできません。
電子機器が放出する電磁波の干渉は、周囲の機器に影響を及ぼし、不具合を引き起こすことがあります。電気自動車(EV車)や自動車の自動運転技術は特に多くの電子部品や電子システムが使われるため、樹脂を使用する場合には何らかの方法で導電性を与え、電磁波ノイズの影響を遮断する対策とする必要があります。
現在、樹脂に導電性を与え、電磁波シールド効果を樹脂に持たせる技術が数多く開発されています。めっきもそのうちのひとつで、代表的な電磁波シールド方法です。
このコラムでは、電磁波ノイズの基礎知識と今後の動向について、さらには樹脂を用いた電磁波シールド材や、主要な遮断技術である「めっき」について詳しくご紹介します。
自動車への電磁波ノイズ対策に関する材料選びや、電磁波シールドにご関心がある方は、ぜひこの内容をご覧ください。
電磁波シールドの基本的な知識について
最初に「電磁波とは一体何か」「なぜ遮断する必要があるのか」ということについてご紹介しましょう。
実は電磁波そのものは私たちの身の回りにあふれている身近な存在です。電磁波とは空中の中を伝わる波動エネルギーのことで、赤外線や紫外線なども含まれています。
このように、電磁波と一口で言ってもたくさんの種類がありますが、このコラムで紹介している電磁波とは「電子機器から発せられる電波」のことを指します。
金属に電流を流すと、不要な信号「電磁波ノイズ」が発生し、電子機器の誤動作、故障などの原因となります。機器間でこの電磁波ノイズによる影響を受けることがないよう、電磁波を遮断する方法を「電磁波シールド(EMI対策・ノイズ対策)」といいます。
特に自動車は安全性が非常に重要であるため、電磁波ノイズ対策は必須と言えるでしょう。
電磁波シールドの詳細は以下のコラムでも紹介しておりますのでご覧ください。
【電磁波の遮断】素材やシールド方法(選択肢)について解説します
自動車産業では電磁波対策はますます重要に
自動車産業における電磁波ノイズ対策は、電子制御の増加、電子システムによって重要性を増しています。グローバル市場では、ノイズ対策製品の需要が高まり、2022年には70億米ドルに達しました。
自動車分野のノイズ対策の市場は安定的な成長を続けており、この成長は5G対応製品やIoT関連機器、電装化が進む自動車搭載向けの開発加速によるものです。特に、マイクロ波やミリ波帯域の電子機器への新たな需要が増大する見込みです。
これらの動向は、自動車産業における自動車の自動運転やコネクテッドカーなどの技術革新と環境への配慮が進む中で、自動車に対するノイズ対策はますます重要になることを示しています。
また、自動車は”動く物”であるため、電磁波対策として使用するものには、振動や温度などの過酷な条件にも耐えられる必要があり、今後ますますの性能の向上が求められています。
樹脂を用いたシールド材について
樹脂を用いたシールド材にはどのようなものがあるのでしょうか。
自動車には安全性や快適性、利便性の向上を図るため、さまざまな電子機器が搭載されています。これらの電子機器には、電磁波を発生・利用するため、ノイズによる自動車の誤動作や故障を防止するために、シールド材が使用されています。
自動車の内部にはたくさんの電子機器が搭載されており、自動車のエンジンやトランスミッション、電子制御ユニットなどのケースやハウジング(筐体)、カバーアンテナ、レーダーなど、様々な部品にシールド材が使用されています。
シールド材には、電磁波を反射・吸収することで、電磁波の伝播を抑制する効果があり、様々な種類があります。以下は代表的な樹脂を用いたシールド材の一例です。
シールド材(方法)の一例
- 電磁波シールドめっき
- 導電性塗料
- 電磁波シールドフィルム(シート)
導電性塗料、電磁波シールドフィルムに関するコラムも掲載しております。是非ご覧ください。
電磁波の遮断は塗料かめっきか?シールド方法の違いについて塚田理研が解説
【電磁波の遮断】フィルムとめっきの特徴や違いについて塚田理研が解説します
上記でご紹介した選択肢の他にも、多様な用途に対応するための様々なシールド材が存在し、それぞれの特性や用途に合わせて適切な選択が求められます。
電磁波シールドめっきについて【高温・電磁波ノイズ対策】
電磁波シールドめっきは、数多くのノイズ対策の中でも最も効果的な遮断方法と言われており、自動車をはじめ様々な電子機器のノイズ対策として採用されています。
遮断したい周波数帯や、電磁波シールド以外の機能性や効果(耐摩耗性、防錆、放熱効果等)を要求する場合にもめっきする金属や厚みなどの選択によって対応が可能で、無電解めっきを使用するため、他の工法とは違う特徴があります。
ここでは、電磁波シールドめっきの特徴についてご紹介します。
均一な膜厚でしっかりと電磁波ノイズを遮断
電磁波ノイズの遮断には樹脂に導電性を持たせる必要があるため、樹脂部品を金属皮膜で覆うめっき加工をします。このめっきによって樹脂に導電性が付与され、金属と同等の電磁波シールド効果が得られます。
めっきのシールド効果は高く、樹脂にめっき(無電解銅1μm、無電解ニッケルを0.25μm)をすると、3mmのアルミ(板)と同等の遮断効果が得られます。
樹脂へのめっき方法は、無電解めっきを用います。めっきにも様々な種類がありますが、樹脂は前述の通り、絶縁体のため電気を利用した工法は使えません。このため、薬品の作用によって金属皮膜を形成する無電解めっきを使用します。
無電解めっきは樹脂などの絶縁体にも使えるほか、薬品の還元反応で金属皮膜を析出するため、複雑な形状や入り組んだ深い部分にもめっきする事ができる点が特徴です。
更に、電気めっきや塗装、スパッタリングなどでは均一な膜厚の形成はできませんが、無電解めっきは均一な膜厚でめっきがつけられます。
無電解めっきは薄くつけることもできるので、ケースとケースを組み合わせるなど、膜厚を考慮したいケースにも適しています。
軽量化による自動車の燃費改善にも貢献
自動車は近年電子化が進んでおり、電子部品や電子システムなど、自動車には電磁波を発する数多くの機器が搭載されてます。同時に燃費改善を目的とした軽量化も進められており、自動車に使われている部品は、重量のある金属部品から軽い樹脂への置き換えも加速しています。
この自動車の金属部品から樹脂への置き換えにおいて、めっき技術は貢献する技術と言えるでしょう。樹脂部品による軽量化で自動車の総重量を削減することができ、自動車の燃費向上に繋がります。
EV車化や自動車の自動運転技術の開発が進められる中、軽く、金属と同等のシールド効果や放熱作用が得られる技術として、めっきは注目を集めている技術なのです。
樹脂めっき加工の技術などについては、下記記事でも解説しております。
樹脂めっき加工の技術やプロセスについてはこちら
塚田理研の電磁波シールドめっき
塚田理研では、電磁波シールドめっきにも対応しています。
自動車の性能は近年大幅に向上しており、自動車の種類によっては50~100基もの電子部品が搭載されています。前述したように、これらの部品から発生する電磁波ノイズは自動車の安全性に影響を及ぼすため、電磁波ノイズ対策は必須です。
これまでもご紹介した通り、自動車をはじめ、多くの電子機器では部品に樹脂を採用していますが、樹脂そのものは電磁波を遮断する事ができません。このため、樹脂にめっきを施し、電磁波シールドの機能性を付与します。
しかし、自動車の電子機器は過酷な環境で使用されるため、対応できる高機能な樹脂(エンプラ、スーパーエンプラ)を使用します。これらの樹脂は難めっき材であるため、対応できるめっきメーカーは限定されます。
塚田理研は、樹脂めっきに特化したメーカーで、エンプラやスーパーエンプラといった特殊樹脂へのめっき加工にも対応しています。自動車に使用される電子機器や部品などへの電磁波シールドめっきにも対応しており、これまで数多くの実績を積み重ねてまいりました。
エンプラへのシールドめっきは国内最大級の規模を持ち、お客様の多用なニーズへの対応が可能です。自動車など電子機器のノイズ対策の事でお困りでしたら、お気軽に当社までご相談ください。
一貫生産体制
当社は金型の作成から射出成形、めっき、塗装、組立まで一貫生産体制を整えております。ワンストップでお任せいただけますので、これまでの発注業務、工程・品質管理など、煩雑な業務の軽減を実現します。
多品種小ロットにも対応した最高品質の全自動ラインによって、安定且つ高品質なめっき加工を提供いたします。もちろん、自動車の部品で使用されるエンプラ、スーパーエンプラへのめっきの量産体制の構築が可能です。
技術部隊があるほか、樹脂材料メーカーとの連携もありますので、めっきに適した形状から樹脂(材料)のことまで、幅広くご相談承ります。
環境保全と新技術の両立を目指しております
めっきに限らず、これからのモノ作りは技術開発において、環境保全も重要です。社会と経済、そして環境保全のバランス性は世界的に今後ますます重要視されることが予想されます。
めっきでは、環境に影響を与える物質を極力使用しない加工プロセス、そして3Rの推進などに取り組む必要があります。
当社は長野県の信州駒ヶ根に拠点をおいており、自然を維持するため環境保全に貢献する技術の開発に注力しております。
めっきは大量の電気を使用し、水と薬品を多く使用するため、環境問題に影響を与えやすい加工方法といえます。人の暮らしのためのモノづくりの技術は、豊かな自然にダメージを与えない、自然を維持できる技術であるべきと当社は考えております。持続可能な社会のため、再生エネルギーを利用したカーボンオフセット、大気汚染の防止、工業排水のリサイクルやめっき排水からの再資源化など、様々な環境保全に向けた取り組みを実施しております。
自動車においても「環境に優しい自動車」の開発が推し進められています。塚田理研は環境保全に注力しており、自動車の製造に関わる様々な規制に対応する技術を有しております。環境規制に対応しためっき技術の提供、ご相談も可能です。
環境問題に対応した技術の詳細につきまして、当社窓口までお問い合わせください。
自動車の電磁波ノイズ対策(EMI対策)は塚田理研まで
自動車の電磁波ノイズ対策(EMI対策)は塚田理研までご相談ください。
当社は樹脂めっきメーカーとして、加飾めっきに加え、電磁波シールドを含む各種機能めっき技術を提供しています。
■自動車への採用事例
自動車を含め、電磁機器などのデジタル技術の進化は目覚ましく、製品の高機能化、多機能化が進んでいます。また、放出される電磁波は高周波化しているため、幅広い範囲の電磁波に対応可能なシールド材や方法が必要とされています。自動車は人の安全に大きく関わる機械なので、自動車に搭載する電子機器、発せられる電磁波に合わせた対策が重要です。
塚田理研では、発せられる周波数帯に適した電磁波シールドめっきを提供いたします。電磁波の専門家がいる専門部隊がありますので、シールド方法、用途に適した母材(樹脂)に関するご相談も承ります。
自動車やその他電子機器の電磁波ノイズの対策に関するご相談は、以下の窓口までお問い合わせください。
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