無電解ニッケルめっきの耐食性とは【特徴】
無電解ニッケルめっきの耐食性について、ご存知でしょうか。
無電解ニッケルめっきは、たくさんの優れた機能性を持っており、その中のひとつに耐食性があります。
この優れた耐食性を利用し、航空機や船舶、電子部品、食品・医療など幅広い分野に応用されています。
プラスチックへのめっきの場合、無電解ニッケルの耐食性は、電磁波シールドめっき(無電解銅+無電解ニッケルの積層めっき)において、機能層である銅の防錆層としての役割があります。
大変優れた耐食性を持つ無電解ニッケルめっきですが、それでも錆びてしまうケースがあります。
今回は、無電解ニッケルめっきが錆びにくい理由や、耐食性が優れているのに錆びてしまう原因、そして錆を予防するための対策について、塚田理研がご紹介いたします。
リン含有による優れた耐食性
無電解ニッケルめっきが耐食性に優れている理由のひとつに、皮膜に含まれているリンの存在が挙げられます。
リンが含まれていることによって、ニッケル皮膜の結晶構造は変化します。
通常、金属の結晶構造は粒子がきれいに並んでいますが、リンが加わり、含有量が増えると並びが崩れた「非晶質」という構造になります。
一般的に、結晶質よりも非晶質の方が、腐食の起点となる部分が少ないため、耐食性に優れています。
そのため、リンを含むことで結晶性の低くなっためっきは、耐食性に優れています。
なお、無電解ニッケルめっきとよく比較される電気ニッケルめっきにはリンが含まれていないため、無電解ニッケルめっきより耐食性に劣ります。
ですが、ニッケル自体は不動態皮膜(酸化被膜)ができるため、一般的には錆びにくく耐食性に優れた金属といえるでしょう。
めっきの均一性
均一な皮膜を得ることができるという点も、耐食性が高いもうひとつの理由です。
無電解ニッケルめっきは還元剤を使用した化学反応によって成膜(無電解めっき)するため、形状や材質問わず、均一な皮膜形成が可能です。
めっきが不均一だと、めっきの厚みにバラつきがあったり、欠陥が多く発生しているため、耐食性が低くなります。
こうした理由から、均一性の高い無電解ニッケルめっきは耐食性に優れていると言えるのです。
一方、電気ニッケルめっきでは、電流を流すことで皮膜が形成されるため、厚みにバラつきがあり、パイプの内部など電気が流れにくい部分にはめっきがつきにくい傾向があります。
そのため、電気ニッケルめっきは均一にめっきをすることが難しく、無電解ニッケルめっきよりも耐食性に劣ります。
無電解ニッケルめっき後に錆びた!発生原因について
無電解ニッケルめっき後に錆びた場合、どのような発生原因があるのでしょうか。
これまで、無電解ニッケルめっきは耐食性に優れている表面処理であることを紹介しました。
理論通りに完全なめっき皮膜が形成されていれば、錆が発生することはほとんどありません。
ですが様々な原因によって、無電解ニッケルめっき加工をしても錆が発生することがあります。
ここでは、無電解ニッケルめっきの加工後に錆びが発生する原因、そしてそのメカニズムについて解説いたします。
※当社はプラスチック専門のめっき加工会社ですが、より詳しくご理解いただくために、プラスチックだけではなく、金属へのめっきについても触れております。
ピンホール
無電解ニッケルめっきのピンホールは、錆の発生の原因になります。
ピンホールは、めっきの処理時に発生する水素ガスが原因で形成される微小な孔のことです。
ピンホールの部分にはめっきが成膜されていないため、素地が水分や酸素に触れている状態になり、腐食しやすい状態になっています。
特に、めっきする下地のイオン化傾向がニッケルよりも大きい場合、ニッケルではなく下地が優先的に腐食が進みます。
このようなケースで錆が発生する事がありますので、無電解ニッケルめっき後の錆の発生を防ぐためには、ピンホールをなくすことが重要になります。
使用環境
海中や高湿度、薬品など、使用環境によってはめっきが腐食または溶解し、錆が発生してしまう場合があります。
リンを含有する無電解ニッケルめっきは、有機溶剤やアルカリ性薬品に対する耐食性に優れていますが、酸性薬品に対する耐性が低いというデメリットがあります。
リンの含有量を多くすることで酸性薬品に対する耐性も高まりますが、決して万能ではありません。
塩酸などの薬品に触れるとめっきが腐食・溶解してしまいます。
めっきが失われて下地が露出すると、酸性薬品以外に対する耐食性も低くなりますので、製品の使用環境には十分に注意する必要があります。
また、経年劣化による摩耗などが原因で錆びるケースもあります。
前処理が不十分
前処理は、無電解ニッケルめっきの優れた耐食性を得るための重要な要素です。
めっきをする素材が金属の場合、素材表面に有機物や機械油、錆などが付着していると、付着物がある部分には成膜されにくく、均一なめっきを得ることができません。
また、不均一なめっきにはピンホールも多くできるため、錆の原因にもなってしまいます。
このような錆の原因を作らないためにも、脱脂洗浄や酸洗いなどの前処理により素材表面の汚れを十分に除去する必要があります。
無電解ニッケルめっきの耐食性向上のための対策
無電解ニッケルめっきの耐食性を向上させ、錆を防ぐためにはどのような対策をすると良いのでしょうか。
無電解ニッケルめっきの耐食性には、めっきの均一性やピンホールの存在が影響を及ぼします。
そのため、ピンホールのない均一なめっきをすることが耐食性の向上に重要です。
金属へのめっきの場合、錆の発生原因でも紹介しましたが、均一な膜厚の無電解ニッケルめっきにするためには、前処理にて素材の表面に付着した汚れや錆をしっかりと取り除くことが重要です。
有機物などの汚れの除去については有機溶剤やアルカリ性薬品を用いた脱脂洗浄が、金属表面の錆や酸化皮膜の除去には酸洗いが良いでしょう。
また、めっきを成膜する際に使用するめっき液を適切に管理することも重要です。
これまでご紹介した通り、無電解ニッケルめっきは、めっき液と素材との化学反応により成膜されます。
そのため、めっき液の温度や濃度分布、pHに変動が生じると、めっき組成が変化したり、ムラのある膜厚になってしまいます。
無電解ニッケルめっきの耐食性の向上には、めっき液の厳重な管理も重要なポイントなのです。
耐食性の高いめっき加工は塚田理研にご相談ください!
耐食性・耐摩耗性など、プラスチックへの機能めっきは塚田理研にご相談ください。
当社はプラスチック専門のめっき加工会社として、高度な技術と最新の設備により、高品質なめっき加工を提供いたします。
今回のコラムでは、無電解ニッケルめっきの耐食性、そして錆びた場合に考えられる一般的な原因やその対策についてご紹介しました。
無電解ニッケルめっきは耐食性の高いめっきとして知られていますが、条件によっては錆が発生する場合があります。
当社、塚田理研では、めっきの自動化をすすめており、製品の状態を全ての加工工程で把握しております。
万が一不具合が発生した場合には、当社ではトレーサビリティによって不具合が起こった工程の早期発見、改善が可能です。
検査体制も整えておりますので、高品質な製品を納品いたします。
プラスチックめっきのパイオニアとして、お客様に安心していただける加工技術を提供いたしておりますので、耐食性で課題がありましたらお気軽にご相談ください。
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