無電解ニッケルめっきの耐熱性について
無電解ニッケルめっきの耐熱性は、母材が金属かプラスチックかによって異なります。
めっきにおける耐熱性とは明確に定義づけられていませんが、耐熱性は一般的に高い温度の環境でも、めっき皮膜の物性が下がらない性質のことを指します。
無電解ニッケルめっきは、基本的に耐熱性に優れており、熱処理後はHv1000程度の高い硬度となりますが、約400℃以上の高温だと一転し、硬度が低下する性質があります。
このような性質が「無電解ニッケルめっきの耐熱性」ですが、これは母材が金属の場合であり、プラスチックへの無電解ニッケルめっきの場合は異なります。
今回はプラスチックへの無電解ニッケルめっきの耐熱性をテーマに、無電解ニッケルめっきの基本的な概要、そして耐熱性について、プラスチックめっきメーカーの塚田理研が解説します。
無電解ニッケルめっきとは?
無電解ニッケルめっきは、外部の電源を必要とせずに処理する無電解めっきのひとつです。
還元反応によって均一なニッケル皮膜が形成される仕組みで、最大の特徴は、複雑な形状であっても均一な厚さのニッケル皮膜を形成できることです。
また、母材が金属だけでなく、プラスチックなどの絶縁体にも適用可能な点も特徴のひとつといえるでしょう。
プラスチックめっきでは、無電解ニッケルめっきはオーソドックスな技術です。
無電解ニッケルめっきを施すことで、プラスチックに金属と同等の特性を持たせることができ、また導電性も付与できるため、電気めっきの下地目的として利用されています。
無電解ニッケルめっきにはメリットともいえる数多くの特徴があるため、幅広い分野で利用されています。
以下にて、無電解ニッケルめっきの特徴(メリット)や用途についてご紹介しましょう。
無電解ニッケルめっきの特徴やメリット
無電解ニッケルめっきの最大の特徴は、加工品の形状や大きさに関係なく、均一な膜厚でのめっきが可能であることが挙げられます。
これにより、複雑な形状の部品でも寸法精度を保つことができます。
さらに、耐摩耗性、耐食性、耐薬品性などの高い性能を持ち、絶縁体にも適用できるため、非常に幅広い分野で利用されています。
また、プラスチックめっきでは、プラスチックを金属と同等の機能性を付与できるため、金属に置き換わる素材として利用できる点もメリットとして挙げられます。
プラスチックは軽くてコストも低いため、幅広い分野で採用されており、ニーズが拡大しています。
無電解ニッケルめっきの特徴に関する情報は、こちらのコラムでも詳しくご紹介しています。ぜひご覧ください。
無電解ニッケルめっきの特徴とは?種類や用途、メリットを徹底解析
用途
無電解ニッケルめっきは工業目的では最も使用されている無電解めっきで、用途も様々です。
例として挙げると、自動車のディスクブレーキや航空機部品などの重要な工業製品から、日常生活に密接に関わる水栓金具や家電の装飾など、さまざまなアイテムに使用されています。
プラスチックにおいては、製品の軽量化や高機能化を実現するための技術として利用されており、今後もその使用範囲は拡大していくことが予想されます。
また、当社では電気自動車や精密機器のノイズ対策として、電磁波シールドめっきも提供しております。
電磁波シールドめっきの詳細につきましては、こちらをご覧ください。
プラスチックめっきの耐熱性について
プラスチックめっきの耐熱性について解説いたします。
冒頭で母材が金属かプラスチックなのか、という点で耐熱性が異なることについて触れました。
母材が汎用プラスチック(ABS樹脂等)の場合、耐熱性は50~100℃と低く、耐熱ABS樹脂であっても110℃程度です。
このため、高温環境下におかれると熱の影響を受け、製品(部品)そのものが変形してしまう恐れがあります。
無電解ニッケルめっきによって形成されたニッケル皮膜自体は、ある程度の耐熱性はあるものの、母材であるプラスチックの耐熱性が低いため、高温の環境での使用は適さないといえるでしょう。
ですが、全てのプラスチックめっきは高温に耐えられないかというとそうではありません。
母材となるプラスチックが、耐熱性に優れた性質を持つエンプラやスーパーエンプラ、特殊エンプラであれば、長期にわたって熱に耐えることも可能です。
エンプラとは耐熱性や強度、耐摩耗性などの性能に優れたプラスチックです。
汎用プラスチックは耐熱性や強度が低いため、用途が限定されますが、エンプラやスーパーエンプラ、特殊エンプラであれば汎用プラスチックでは適用できないハードな使用用途にも対応できる場合があります。
下記は各種プラスチックの耐熱性(目安)となります。
汎用プラスチック (ABS樹脂等) |
耐熱性:50-100℃程度 |
エンプラ (PC、PBT、PA等) |
耐熱性:100-150℃程度 |
スーパーエンプラ (PES、PPS、PEEKなど) |
耐熱性:200-300℃程度 |
エンプラ、スーパーエンプラは、自動車用部品、電子機器部品など性能を求める部品において、金属素材から置き換えることができ、なおかつ軽量化、コスト削減を実現するメリットがあります。
ですが、エンプラやスーパーエンプラへのめっきは、汎用プラスチックと同じ工法ではめっきがつかないため「難めっき材」とされており、加工可能なめっき会社は限定されます。
当社、塚田理研はエンプラやスーパーエンプラなどの難めっき材へのめっき加工について、20年以上前から技術の研究開発に取り組んでまいりました。
このため、エンプラやスーパーエンプラへのめっきにも対応しております。
製品の使用用途や想定される温度をはじめ、必要条件をお伺いし、用途に適した樹脂のご提案をすることも可能ですので、課題がありましたらお気軽にご相談ください。
なお、ABS樹脂へのめっきにつきましては下記記事にてご説明しております。
エンプラへのめっきの採用事例について
エンプラへのめっきの採用事例について、一例をご紹介します。
●自動車のエンジン部品
自動車メーカー様から、エンジン部品(金属製)の軽量化とコスト削減を目的とした金属代替のご相談を頂きました。
必要条件をお伺いし、量産を見据えた試作対応後、量産体制を整えました。
素材を金属からプラスチックに切り替える際、これまでの耐熱性や剛性、電磁波シールド性などの条件を維持することは重要です。
「このような用途で使われている金属製の部品を樹脂化したい」
このようなご相談は当社にご相談ください。
当社の経験豊富な営業スタッフ、専門技術部隊が丁寧にお客様のご要望をお伺いし、最適なプラスチック素材をご提案いたします。
新素材への試作にも対応しております
塚田理研では、新素材(プラスチック)へのめっき技術の開発のご相談や、試作のご相談も承っております。
めっきがつくかどうかわからない素材に対しても、ご要望をお伺いし、適切なめっき方法をご提案いたします。
また、一点試作にも対応しております。
樹脂メーカー様が新開発されたエンプラへのめっき技術も多く開発してきた実績がございますので、新素材へのめっきについて課題がございましたら当社までお気軽にお問い合わせください。
耐熱性を要求する場合は母材が重要!プラスチックめっきの課題は当社にご相談を!
耐熱性をプラスチックめっきで求める場合は、母材となるプラスチックの選択が重要です。
今回のコラムでは無電解ニッケルめっきの耐熱性についてご紹介しました。
無電解ニッケルめっき自体は高い耐熱性があり、約400℃以下であれば物性が低下することはありません。
ですが、これは金属素材への無電解ニッケルめっきのケースであり、プラスチックへの無電解ニッケルめっきの場合だと、めっき皮膜は問題なくとも母材が変形してしまう為、汎用プラスチック+無電解ニッケルめっきによる製品は耐熱性が低いと言えます。
このようにABS樹脂のような一般的なプラスチックは高温の環境には適しませんが、耐熱性に優れているエンプラやスーパーエンプラであれば高温の環境でもお使いいただけます。
ですが、エンプラなどは汎用プラスチックと同じ工法ではめっきできないため、難めっき材とされており、めっきメーカーによっては対応できない場合もあります。
当社塚田理研はプラスチック専門のめっきメーカーとして、エンプラやスーパーエンプラなど難めっき材へのめっき技術を開発しており、これまで多数の実績がございます。
耐熱性など、汎用プラスチックでは対応できない性能をお求めでしたら、最適な素材をご提案いたしますので、お気軽にお問い合わせください。
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本社:0265-82-3256
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