無電解ニッケルめっきの特徴について
無電解ニッケルめっきの特徴はどのようなものか、ご存知でしょうか。
このコラムでは、無電解ニッケルめっきの特徴について、詳しく解説いたします。
無電解ニッケルめっきとは、無電解めっきによって製品上にニッケル皮膜を形成するめっき技術で、工業目的ではよく使われているオーソドックスな技術です。
無電解ニッケルめっきは数多くのメリット(特徴)があり、様々な産業で需要が拡大している技術でもあります。
無電解ニッケルめっきには、以下の5つの特徴があります。
・還元反応で金属皮膜を析出
・複雑な形状にも均一な膜厚でめっきができる
・膜厚のコントロールができ、厚付けも可能
・金属だけでなく絶縁体にも適用可能
・硬度、耐摩耗性、耐食性、耐薬品性に優れている
金属だけでなく、プラスチックにもめっきができる特徴があるため、プラスチック製品の加飾性や機能性、導電性の付与(電気めっきの下地)などを目的に活用されており、プラスチックめっきでは必要不可欠な技術と言えます。
また、プラスチックは非常に軽量という特徴もあるため、EV車など製品の軽量化が求められる分野で注目を集めており、プラスチックめっきは製品の機能性向上の可能性を広げています。
電気ニッケルめっきとの違いについて
無電解ニッケルめっきと電気ニッケルめっきとの違いは、以下の点が挙げられます。
無電解ニッケルめっき | 電気ニッケルめっき | |
めっき方法 | 薬品による化学的還元作用を利用 | 電気エネルギーを利用 |
成分 | ニッケル合金 | ニッケルの純度が高い |
膜厚 | 均一 | 不定 ※エッジ部分に厚く付く |
適用可能な素材や形状 | 伝導性の有無に関係なく処理できる。 また、複雑な形状も可能。 |
伝導性のある素材(金属)に対応。 形状は限定される。 |
両方ともニッケルを析出する技術ではありますが、このような特徴があり、違いがあります。
また、上記の特徴の違いの他にも、工数と原材料が異なるため、加工時間や価格といった点にも違いがあります。
無電解ニッケルめっきの用途
無電解ニッケルめっきの用途は多岐にわたります。
自動車部品(ディスクブレーキ等)をはじめ、精密機器の部品、航空機部品、その他のプラスチック部品(水栓金具、家電の装飾、電子機器の電磁波シールドなど)など、様々な用途で使われています。
プラスチックめっきでは、加飾めっきの他、製品の軽量化を目的に金属の部品からの置き替わる素材としてプラスチックが選ばれており、主に自動車産業で使われています。
また、他の微粒子を添加して機能を付与できる複合めっきも可能なため、ハードディスクの下地や電子部品などにも使われています。
当社では、加飾めっき、機能めっきの他に、無電解銅+無電解ニッケルめっきによる「電磁波シールドめっき」も加工が可能なので、電磁波の干渉防止を目的として精密機器や自動車部品などの分野でもご利用いただいております。
当社のプラスチックめっき技術に関するご質問、またプラスチック素材へのめっきで課題がありましたら、お気軽に当社までお問い合わせください。
無電解ニッケルめっきのメリットとデメリット
無電解ニッケルめっきのメリットとデメリットは、以下の通りです。
メリット | ・電気が不必要で、形状に制限がない。(※)
・ピンホールが少ない。 ・通電性のない素材(アルミニウム、ステンレス、銅、プラスチック、セラミック)にも適用可能。 |
デメリット | ・薬剤を使用した加工法のため、材料費が高い。
・析出に時間を要するため、加工コストが高い。 ・厳重なめっき液の管理が重要(浴組成の変化が大きい) |
無電解ニッケルめっきは電気を必要とせず、通電性のない材質にも適用できる特徴があります。
前述の通り、プラスチックへのめっきでは、電気めっきの下地として利用できるため、無電解ニッケルめっきは一般的によく使われています。
複雑な形状にも均一な膜厚でめっきできる特徴もあるため、寸法精度が求められる製品に適しています。
また、プラスチック製品に金属と同等の機能を持たせられるので、金属からの置き換えが可能になるという点もメリットとして挙げられます。
※【製品の形状について】
プラスチックめっきは形状に制限なく加工が可能ですが、品質よくめっきするために設計時に避けるべき形状があります。
設計時に考慮していただく事で、不良率とコストを低下させ、外観性を向上させることが可能です。
こちらのページで、めっき性の向上が可能になる設計時のポイントについてご紹介しておりますので、是非ご参照ください。
プラスチックめっき(POP)「プラスチックめっき設計上の留意点」
無電解ニッケルめっきの種類について
無電解ニッケルめっきの種類には、どのようなものがあるのでしょうか。
無電解ニッケルめっきのなかで最も使われている種類は「無電解ニッケル-リンめっき」です。
また、「無電解ニッケル-リンめっき」のほかにも「無電解ニッケルホウ素めっき」や特殊めっきなどがあります。
種類によって特性は異なりますが、大事なことは特徴や特性の一つひとつをしっかり理解し、どれが最適なめっき方法なのかを見極めることです。
以下にて、無電解ニッケルめっきの種類や特徴(特性)について詳しくご紹介していきます。
無電解ニッケル-リンめっき
無電解ニッケル-リンめっきは、リンを含むニッケル合金です。
無電解ニッケル-リンは、無電解ニッケルめっきの中で最も使われている種類です。
リンの割合によって、以下の3つのタイプに分けることができ、それぞれのタイプによって特性(特徴)があるため、用途に合わせて選びます。
低リンタイプ | ・耐アルカリ性に優れている。
・耐食性に劣る。 |
中リンタイプ | ・耐食性に優れている。
・汎用性が高い。 |
高リンタイプ | ・耐酸性に優れている。
・高温の熱処理でも非時磁性を維持できる。 ・析出に時間がかかる。 |
無電解ニッケル-ホウ素めっき
無電解ニッケルホウ素めっきは、ニッケルとほう素(フッ素とホウ素の化合物)の混合物を使用して行われるめっき方法です。
無電解ニッケルほう素めっきの特徴は、「耐摩耗性に優れている」「耐腐食性が高い」「高温環境に耐える」などがあります。
摩擦や擦れに強く、化学的な腐食から部品や表面を保護し、高温の部品や装置に使用される無電解ニッケルほう素めっきは、工業製品や自動車部品、航空宇宙産業などで取り入れられることが多く、非常に優れためっき方法といえます。
ニッケル-リンと比較するとコストが高い点がデメリットとしてあります。
その他の特殊めっき
その他の種類として、特殊めっき「複合めっき」「多元合金めっき」についてもご紹介します。
「複合めっき」は、微粒子をめっき液に混ぜて均一に分散させ、それらの微粒子をめっき皮膜内に結合させる方法です。
微粒子が持つ「潤滑性」「撥水性」「耐摩耗性」などの特別な機能の付与が可能で、「コンポジットめっき」「分散めっき」ともいいます。
また、「多元合金めっき」というめっき方法もあります。
多元合金めっきは、通常2つ以上の異なる金属層を使用し、これらの金属を組み合わせることで、多くの異なる特性を持ち合わせることが可能となる方法です。
どちらの方法も、異なる特性を組み合わせることで、部品の品質や性能を向上させることができるメリットが特徴としてあります。
プラスチックへのめっきは塚田理研にお任せください
プラスチックへのめっきは、プラスチックめっきの塚田理研にご相談ください。
今回のコラムでは無電解ニッケルめっきの特徴について、広く解説いたしました。
めっきは何でも適用できるイメージをお持ちの方も多いかと思いますが、寸法精度が求められる製品や、素材が絶縁体の場合には「無電解めっき」にて処理します。
「無電解ニッケルめっき」は工業目的で最も多く使われている無電解めっきであり、様々な特徴やメリットがあるため、幅広い産業で活用されています。
プラスチックめっきの領域では、無電解ニッケルめっきはプラスチックに新たな用途や価値をもたらす可能性のある技術のひとつといえます。
塚田理研はプラスチックめっきのパイオニアとして、プラスチックめっきの新技術や付加価値の提供を目指し、研究開発に注力しております。
エンプラやスーパーエンプラなどの難めっき材への無電解ニッケルめっきにも対応しておりますので、プラスチックへのめっきでお困りのことがありましたら、お気軽にご相談ください。
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